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インタビュー × 川田ツトム プリント メール
作者 SGS取材班   

ハウスウェディングの草分け的存在であり、数多くの施設を成功へと導いてきた。その成功の根底には「人に幸せになってもらいたい、喜んでもらいたい」という、デザインの枠を超えた普遍的な想いがあった。

 

下北沢から徒歩1分、閑静な住宅街の中にある事務所は、南仏風の佇まいが美しいマンションの1F。実はこのマンションも自身によるデザイン。ガラスに囲まれたオフィスの中で、ウェディングの仕事やデザインに対する想いを探った。

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───川田さんはハウスウェディング(※1)の草分け的存在とも言えますが、最近もやはりウェディングのお仕事をたくさん手がけられていますね

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ウェディングにこだわっているわけではないんですが、おかげさまで忙しくさせてもらっています。デザイン事務所なので、最初はウェディング施設の「デザイン」をやっていこうと思っていたんです。でも、特にここ最近はデザインをやるというよりも、どうしたら喜んでもらえるんだろう、 ここに来た人が幸せになってもらうためにはどうしたらいいんだろう、それを考えてものづくりをしていますね。そのまちや地域の人たちからそこに求められているもの、楽しんでもらえるもの、幸せになってもらえるものっていろいろあると思うんですけど、そういうものの中でウェディングが自分には一番当てはまったというか。


───「デザイン」という枠にとらわれずその仕事にかかわっていく、と。

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グランドプリンスホテル広島
「海と光のクリスタルチャペル」

「設計」や「デザイン」というのはあくまでもそういったものを表現する"手法"でしかないんです。
デザインの前にまずはクライアント様と、「新婦さん、親族さんにこういうところで喜んでもらえたらいいよね」っていう打合せをしながら話をしていくと、クライアントさん達自身のモチベーションが上がってくるのね。そうなったら、その仕事はもう成功ですね。そのようにしてつくっていくと、その施設は間違いなく成功していく。
例えば、この間完成した広島プリンスホテルの式場も皆様方にものすごく喜んでもらって、実際に数字も上がった。でもね、こうやって僕がやったことって全体の2割程度でしかないんですよ。お客様に喜んでもらうにはどうしようって考えて、ああしよう、こうしようって皆で話し合って、チーム一丸となってつくり上げたものですから。
デザイナーとしては、いいデザインをするというのは当たり前のことだと思っています。僕は建築家でもないんで自分の作品を起こすというよりも、そこで触発して一緒につくっていくというのが仕事。
だからね、そこの人が何を求めていて、幸せになってもらうにはどうしたらいいんだろうっていうことを考えていったら、このウェディング施設という仕事が僕にはぴったりはまっちゃったんですよね。どんぴしゃはまってしまった。だから有難いことに、ウェディングのお仕事は本当にたくさんいただいていますね。


── では、ウェディングのお仕事を始められたというのは偶然であった…

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「こういう生活に憧れていた」と話すマンション

はい、偶然というか、僕は人の縁というものをすごく、しつこいくらいに大切にしているんですけど、ウェディング業界に関わることになったのも正に人の縁がありました。ベストブライダル(※2)が「ゲストハウスウェディング」というものの1号店を始められるということで、社長の塚田さんからお話をいただいて。塚田さんはデザイナーというものを知らなかったですし、だから彼と一緒に正に”一から”始めましたね。

こういう風に仕事をしていくと、最初はインテリアデザインから始めたのが、段々とそういうカテゴリーにとどまらず、必然的に建物の建築デザインであったり、大きなショッピングセンターであったり、もちろん小さなお店もやりますし、僕自身の仕事もどんどん拡がっていきましたね。ここの(事務所が入っている)マンションもそうですよ。こういう生活やこういうデザインの家に住みたいと思っていて、かといってこの街並みに浮いてしまうのはいやだった。この路地を通ったときに何となく素敵だなと思えるような建物にしたかったんですよ。

 

── 確かに素敵なデザインで目にとまりますが、決して街並みの邪魔にはなっていない。これもそのまちで求められているもの、喜んでもらえるものをという想いから生れたわけですね。

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1Fにある打合せスペース兼ラウンジ
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帰りにスタッフが遊んでいけるようなバーを

そうですね、例えばこんな話があります。ずいぶん前ですが、渋谷のスペイン坂の上がりきったところに1.6坪の小さな店舗の敷地があった。そこに、ある大手さんが色んなお店を出したんですけど、1時間に2000人という通行量にも関わらず何をやってもうまく行かない。そんな時にそこでクレープ屋さんをやりたいという人からお話をいただいたんです。
僕はその頃カヌーによく乗っていたんですけど、カヌーって流れが激しい程たくさん漕がないと沈んでしまうので激流ってすごく疲れるんですよ。でもその流れの中に1つ岩があると、その川下のところは休憩ができるんです。
そこで、スペイン坂の人の流れを川としてみると、1人止まれる仕掛けさえあれば人は集まってくると思ったんです。そして厨房を少し削ってそこにくぼみを作った。するとそのくぼみに1人止まる。1人止まると2人、2人止まると4人…そうやってあっという間に行列ができました。さらに並んでいる間にお客さんを飽きさせてはいけないのでそこにクレープのサンプルケースを置いて…。
そんなちょっとした工夫で、今でもたくさんのお客さんに来てもらって行列ができていますよ。そのまちの人が何を求めているか、そういう視点が大切なんですよね。

逆に言うと失敗もある。僕はこの事務所を最初、まちの人のコンシェルジェみたいなものとしてイメージしたんです。ここに地域のお母さんたちが集まって子どもを遊ばせて行けるような。そういうコンセプトまではよかった。でもコンセプトと地域とデザインがアンバランスだとやっぱりうまくいかないんですね。昼間はそういう場所にして、夜はおしゃれなバーにしたいと思った。でもそうすると逆に昼間の人たちが居心地が悪くなってしまってね。あとは、近隣の問題ですね。本当にちょっとしたことなんですが近隣で問題があって、喧嘩をしてしまうというやり方もあったんですが、地域という目で見てこちらがやり方を変えようと。ただそういった失敗もいい経験になってますよ。失敗も教訓として活かしてクライアント様とお仕事ができています。

 

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───そういった経験も踏まえて、今後もクライアントさんと一緒につくりあげていくわけですね

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デスクの壁にはアイデアがあふれている

こういうやり方をしているので、お断りするお仕事も実はあります。例えば最近はデザインコンペはあまり追いかけないですね。デザインコンペって、デザインという表現の部分だけにものすごくエネルギーを使うわけじゃないですか。もちろんコンペも基本的にはすごく重要でそういう仕事の取り方ももちろんある。ただ、僕が今進めている施設なんかは、そういう進め方をするよりもウェディングプロデューサーやお店の人たちと話をしてどうやったらみんなに喜んでもらえるのかっていうのを一緒に考えていこうと。そこから生れるデザインもありますよね。デザインの方向性というのは予めあるかもしれないですが、皆のモチベーションを上げて予想しなかったものをつくる。もちろんビジネスだからきちんと売れる施設をつくらなければいけないわけですけど。
だから、僕の事務所のスタッフたちにもデザインのやり方や考え方といったものよりも、人と人とのコミュニケーションの取り方には徹底的に注意していますね。人の感覚のほんの少し先を読む。そこが分からなければデザインは絶対にできないです。

 

───お話を伺っていると何だかデザイナーというよりコンサルタント業という感じですね。

いや、全然そんなんじゃないです。僕はただ楽しく仕事をしましょう、と。楽しく仕事をしていたらお客様も楽しいですよね。楽しく仕事をしようとしたら、無理なく美しい生活をしたい。ライフスタイルを持つということはすごく大事で、気が向いたらどこかに出かけて、家に帰るとあたたかい家庭が待っていたり。そういうことがしたいがために、まず皆に幸せになってもらわないと、ただそういう感じなんです。

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ガラスで仕切られたオフィス
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仕切りガラスにも
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次々と浮かぶアイデアを書き留めておく

※1 ハウスウェディング…ゲストハウスウェディングとも言う。これまでのホテルや式場で行うスタイルとは違い、邸宅をイメージした施設を丸ごと貸切り、"お客様を自宅にお招きする"ような感覚で行うことからこのように呼ばれる。個性を出せるとして今人気のウェディングスタイル。
※2 ベストブライダル…株式会社ベストブライダル。ハウスウェディングの走りである日本橋アフロディテを98年にオープン。以来、首都圏を中心に各地にハウスウェディング施設を展開している。

川田ツトム Tsutomu Kawata

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1961年 埼玉県生れ。'83年 北海道東海大学芸術工学部デザイン学科卒業。'83~'88年 船場設計部勤務後、'88年カワタデザイン事務所設立。'96年 ネオックスデザインに社名変更。

Neox-Design inc. ネオックスデザイン株式会社

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