Formwerks Studios Interview プリント メール
作者 Jim Parker    2008/08/01 金曜日 10:36:33 JST

test合衆国南部に位置するアリゾナは、グランドキャニオンやサボテンのある砂漠の風景、ワイアット・アープ、OK牧場の決闘、大変暑い夏で有名ですが、それに加えこの20年、多くの優秀な建築家を輩出しています。日本で12の建造物をデザインした建築家のフランク・ロイド・ライトは晩年、冬の間は温暖なアリゾナで過ごしていました。その時の建築的な影響は偉大であり、それから半世紀経った今もなおその影響力は衰えていません。彼の有機的なデザイン、そして灼熱の砂漠や高騰する燃料コスト、代替エネルギーなどの問題が、アリゾナにおける創造的なデザインを生み出しているのです。

「アリゾナ建築シリーズ」では、アリゾナの若くて有望な建築家とその事務所を紹介していきます。彼らがどのようにして現代の建築と環境に対峙していくのか。是非記事を読んで意見やコメントをお寄せください。

 

Formwerks Studios

 

5070 N 40th St
Suite 240
Phoenix, AZ 85018
TEL: 602-468-0103
HP: www.formwerksstudios.com
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Lou Werner

 

第1回目のインタビューは、フォーム・ワークス・スタジオの創設者であるルー・ワーナー氏。フォーム・ワークスは、アリゾナ州都フェニックスの目印であるカメル・バック・マウテンの近くにあり、この地域は”パラダイス・バレー”と呼ばれる高級住宅街の入口に位置します。ワーナー氏は2002年にフォーム・ワークス・スタジオを立ち上げ、幅広い分野で活躍しています。


Jim: ホームページを拝見させていただいて、以下の4つの項目をベースにしてデザインされているのだと思いました。

  • クライアントのライフスタイルを理解する
  • 現場の環境を研究する
  • クライアントと一緒に問題を解決していく
  • バランス、調和、個性を重視し、現場に最適な自然素材を使用する

フォーム・ワークスの作品は、砂漠という環境をとても上手く反映していますね。 例えば「デザート・ヘイブン(砂漠の安息地)プロジェクト」は、砂漠と丘という現場の自然環境に、とても調和しています。しかしこの現場の特徴が夏の異常な暑さと湿度の低い砂漠であるのに対し、「ハワイプロジェクト」は太平洋の島々特有の熱帯環境に実によく調和しています。全く違う環境の現場でデザインをしていくのはとても難しいことだと思うのですが。

 

Formwerks: Hawaii residenceLou:それを説明する前に、先の4つの項目についてもう少し詳しくお話したいと思います。

依頼をいただいて、最初にすることはクライアントの家庭を理解するです。例えば、朝起きてご主人はすぐ新聞を読むかどうか。読むのであれば、家の中で読むのか、外で読むのか。家の中であればどこの部屋で読むのか。そして朝ごはんを食べながら読むのか、それとも朝食後に私室(デン)に行って、コーヒーを飲みながら読むのか。子供はいるのか、何人いるのか。両親は一緒に住むのか、事務所は必要か。照明は自然光がいいのか、人工照明がいいのか、といったことを一つひとつ確認します。家族の習慣、好みなどをまず確認するんです。それらを把握し研究した上で、家の中のスペースがどのような関係性を持つのかが初めて分かってくるんです。

次に、現場の環境を朝・昼・夜という観点で研究します。現場の地質の特徴、その特徴を建物の一部にするには何が必要か。現場の背景となる景色は何か、その背景をうまく活用するにはどうしたらいいか。現場と地域の歴史、考古学的に価値のあるものや遺跡があるのか。あればそれをどのように保存していくのか。季節ごとに変化する日光の角度はどうか。そしてアリゾナにおける最大のポイントは、夏です。冬はかなり穏やかなので、建築的にあまり問題はありません。極端に冷え込むということは滅多にないですし、雪が降ればそれこそお祭騒ぎです。しかし夏は違います。デザインとして影を上手に利用することは大事な要素となります。エネルギーの利用と省エネルギーに大きく関わる問題ですから。影をつくる要素としては、山、砂漠の木、壁やひさしの部分です。

Brody Residence

Formwerks: Brody Residenceformwerks_brody_residence.jpg

デザインをする上でもう一つの重要な項目は、その家、その建物のテーマを考えることです。例えばブローディ家を例に説明しましょう。まず、ブローディ家の芸術コレクションは、原色が多く、VaserelliやYasamiといった立体派の作品が中心です。それでわざと、家の色調を落とし、シャープなラインのデザインに改装しました。アクセントに、ステンレススチールとパンチングメタルを利用しています。また、ブローディ氏は趣味でモーターボートを所有しています。その趣味を反映したのが、10メートルものマスト(帆船に帆を張るために立てられた垂直な棒)を使用したベランダです。マストはさび色のオーニング(日よけ・雨よけ)も支えています。このベランダからのパラダイス・バレーの眺めは大変美しいんですよ。また、家族全員が卓球好きなので家の中央に卓球部屋を配置しています。これはブローディ家にとってもう一つの重要なテーマです。

 

DesertHaven

法則の3つ目は、期待通りの結果を実現するため、クライアントと共同でデザインしていくことです。クライアントの希望を踏み潰して自分たちのエゴを押し通すようなことは決してありません。

formwerks_deserthaven.jpg例えば、最も思い出深いプロジェクトに「デザート・ヘイブン(砂漠の安息地)プロジェクト」があります。デサート・へイブンのデザインを依頼したクライアントは香港に住むアメリカ人。彼は何年もの月日を費やして、世界的に有名な14人の建築家にデザインを依頼しました。しかしなかなか自分が期待している答えは出ませんでした。そこで私たちに依頼が来たのです。そして彼の発想を聞き、意見が一致したのでそれから2年をかけてデザインに取り組みました。クライアントの依頼は難しく、複雑で、そしてとても強いこだわりを持っていました。しかしこちらの意見も良く聞いてくれ、このプロジェクトに取り組んでいる時間は、実に楽しいものでした。残念ながら2年に及ぶデザインが完成したところで事情が変わり、このプロジェクトは中止になってしまったんです。現在はその現場に違う住宅のデザインをしているところです。

Jim:非常に残念です。ホームページで見てとても気に入っていたんです。デザインが周囲の環境にとても自然に溶け合っていて、砂漠の一部、天然のオアシスのようです。

Lou:そうですね残念です。ただ、いい面もあるんですよ。このデザインは採用されなかったので、ビジョンとお金を持っている方がいらっしゃれば、この企画をそのまま使用できるんです。日本か中国の方を見つけて頂ければ嬉しいですよ!

Jim:ウォルマートでアルバイトを頑張れば、2年後に僕が頼みます!

Jim and Lou:

Lou:4つ目の法則は、現場の自然環境を利用してデザインするということです。先ほど熱帯のハワイのデザインと、砂漠のアリゾナのデザイン、そしてそれらの違いに言及しました。実は、幸運にも子どものときに両親によくハワイに連れて行ってもらっていたので、ハワイの環境は僕にとってはそれほど珍しいところではなかったんです。しかし、現在ハワイにいくつかのプロジェクトがありますが、各プロジェクトそれぞれに困難な面はあります。このことは砂漠のプロジェクトでも同じことです。現場に影響を与える環境的な問題は何か。家族は家の中でそれぞれどんなことをするのか。その家庭の癖は何だろう。つまり砂漠であっても、ハワイであっても、基本的な課題は変わりません。ニュアンスだけが変わるんです。

アリゾナで最もエキサイティングな季節は7月と8月に来るモンスーンの時期です。1時間に2インチ(約5cm)以上の降雨は珍しくありません。雨が降る前に何百メートルもの高さがある砂嵐がフェニックスを通過することもよくあることで、その後は雨と落雷がやってきます。この嵐はすさまじいもので、長くフェニックスに住んでいる人たちにとっては生活の一部になっています。

Jim:その通りです!アリゾナの夏は暑くて厳しいので、なぜわざわざそんな季節に日本から帰ってくるのかとよく聞かれます。でもこの砂嵐のある地方で生まれ育ったので、夏雲が山の上で大きくなり、それがフェニックスに降りてくるのを見る楽しみは、夏の厳しさを十分やわらげてくれるものです。

Hawaiian Home

Formwerks: Hawaii Residence with Lava Rocks Lou:私たちはデザインをする際に、現場の自然環境を強調するよう心がけています。例えば、灼熱のアリゾナ砂漠で生き抜くためには影が不可欠です。影を上手に利用することは、環境に対するCO2の影響を減らすことにもつながります。この点で、自然条件は違えどハワイとアリゾナはさほど違いありません。

この家にはリビングと食堂にエアコンがありません。その必要がないんです。かなりオープンなつくりになっているので、風通しが大変良いのです。図面を見てお分かりになるように、台所や寝室といった部屋にはエアコンを設置しています。とは言っても、これらの部屋も簡単にオープンにすることができるようになっています。またご存じのように、ハワイ島は火山でできているので、そこら中に火山の石があり印象的なので、それをデザインに取り入れています。ご覧のとおり、地上に露出した溶岩の周りに家をデザインしています。つまり平らな土台を築くのではなく、その溶岩をそのまま家の土台としたのです。これはこの住宅にとって非常に不可欠なものです。

New River Residence

Jim:ホームページを拝見して特に惹きつけられたデザインがありました。この家の一部は氾濫原の中に建っていますね。

Formwerks: New River Flood Plain ResidenceLou: そうですね。この土地の持ち主は、開発されそうもないこの土地を売ろうとしているところでした。ここの問題は、氾濫原の真ん中にドライ・ウォッシュ(雨が降ったときにのみ水が流れる川)があるということでした。ただ、売る前に土地の値段を少しでも高くしようと、井戸を掘るためフォーム・ワークスに相談にきたんです。しかしアリゾナの夏の特徴はモンスーンです。この季節に急に2~4cmの雨が降ることは珍しくありません。そういった時に、急にドライ・ウォッシュが水でいっぱいになって流れ始めるということがあります。でもこの現場はとても眺めが良かったので、売ってしまうにはすごくもったいないと思ったんです。そこで、この氾濫原の上に家を建てることを提案しました。洪水にも対応できる丈夫な土台の上に家を建てれば、素晴らしい環境ができると伝えました。彼はこの提案に賛成して、結果このような家を建てることができました。その土地に合った暮らしと、砂漠のユニークな風土に合った住空間。この家の良いところは、雨が通り過ぎると、下を流れる洪水を家の中から楽しめることです。ちなみに、井戸を掘ってみたら水が出てきたという嬉しいオマケもあったんですよ!

Airport Hanger and Offices

Jim: 今までのインタービューは住宅に関するお話でしたが、それ以外のプロジェクトはありますか?

Formwerks: Airport Private Hanger Lou: はい。プライベートジェットの飛行場と事務所を総合した建物のデザインプロジェクトがあります。スコッツデール市にはビジネスジェット用の飛行場もあります。そこを利用する人たちはかなりのお金持ちばかりで、中には会社のオーナーや取締役といった人たちもいるので、ジェット機の格納庫と事務所を含めてデザインしています。このデザインにも、年間の日の出と日没の位置や事務所からの眺め、オーナーのビジネス内容をよく考慮してあります。格納庫は、飛行機の安全性だけではなく、飛行機を維持しやすくするための環境も計算してデザインしています。

 

 

La Ventana

Formwerks: Penasco Condominiumプエルト・ペナスコ・メキシコにあるラーベンダナというマンションの開発も大変思い入れのある物件です。プロジェクトに参加した時点では、幅152メートルの3階建ての建物の、幅の短い面は海辺に面し、長い面にマンション、その反対側に駐車場を配置するという計画でした。しかしもっと上手くこの土地を活用する方法があるのではないかと思い、私たちはマンションを両側に置き、その間に公園を置くという計画に変更しました。また、駐車場は公園の下に設置し、日中はそこに自然光が入るようトップライトを用意しました。それぞれの住戸は1~4部屋で、広さは83.6~288平米です。全ての住戸が1フロアで、6階の部屋には屋上にプライベートデッキがあり、全ての方角を眺めることができます。オーシャンビューという立地と現場の利点をより活かそうとする努力が、この建築を引き出してくれました。隣接している住戸の位置関係を、曲がっていたり、出っ張ったり、引っ込んだりといった具合に配置したことが、このデザインの価値であり、ユニークな点です。

Sunset Peaks

Formwerks: Sunset Peaks Business Building現在、スコッツデール市にあるサンセット・ピークという商業ビルのプロジェクトを手がけています。この3階建てのビルもなかなかユニークなもので、アリゾナの峡谷を切り出したような長方形のデザインをしています。このデザインはスコッツデール飛行場の周りの絶え間ない人々の流れや活動を表現しています。傾いたデザインのファサード、全体的に角度のあるデザインやビルの角にあるネガティブ・スペースの組合せが、お客さんを中へと誘導します。スコッツデール通りから入口へ向かって歩いていく人は、ビルの正面から出ているクモの巣のように張りめぐらされた窓の仕切りの下を通ります。この峡谷の奥にビルの入口があるのです。ビルの外側の壁は、ビルの発電のためソーラーパネルになっていて、太陽光の効果を上げるため斜めに傾いています。その仕組みによって、夜になるとビルがライトアップされてこの峡谷が美しく照らし出されます。

Jim:日本にクライアントはいますか?

Lou:残念ですがまだいません。日本にはとても刺激的な建築物がありますよね。そしてフランク・ロイド・ライトもよく知られています。ご覧の通り私たちのデザインも、特にデザインと自然環境の関係を見ていただければ、ライト氏の影響をかなり受けているということがわかると思います。そこが日本であろうと無かろうと、日本の方々に私たちのデザインを提供することができたら、本当に素敵なことだと思います。

最終更新日 ( 2008/10/15 水曜日 10:55:13 JST )
 
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